リスキリングとリカレント教育の違いとは?5つの視点でわかりやすく比較

リスキリング」と「リカレント教育」はどちらも社会人の学び直しとして注目されていますが、「結局どう違うの?」「自分にはどちらが合うの?」と迷う方は少なくありません。両者は似ているようで、主導する主体や学ぶ目的、学習スタイルなどに明確な違いがあり、正しく理解しないと自社の人材育成や個人のキャリア設計で最適な選択ができなくなってしまいます。

この記事では、リスキリングとリカレント教育の違いを5つの視点で比較しながら、それぞれのメリット・デメリットや自分に合った選び方、活用できる支援制度までまとめて解説します。読み終えるころには、どちらの学び直しから始めるべきかが明確になるはずです。

▼参考記事
リスキリングとは?意味・類語との違い・メリットから始め方まで完全ガイド

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目次

リスキリングとリカレント教育の違いとは?結論を先にわかりやすく解説

リスキリングとリカレント教育は、どちらも「学び直し」に関する取り組みですが、その本質は大きく異なります。ここでは結論を先に示し、両者の違いの全体像を把握できるようにします。

一言でいうとリスキリングは企業主導、リカレント教育は個人主導

一言でいうとリスキリングは企業主導、リカレント教育は個人主導

リスキリングとリカレント教育の最も根本的な違いは、「誰が主導するか」という点にあります。リスキリングは企業が人材戦略の一環として推進する取り組みであり、DXや事業変革に対応できる人材を社内で育成することが主な狙いです。一方、リカレント教育は個人が自らの意思でキャリア形成や自己実現のために学ぶ営みです。ただし、日本では企業がリカレント教育を支援するケースも増えており、厳密には「誰が学習内容や目的を決めるか」で捉えると理解しやすいでしょう。

この違いをさらに整理すると、「何のために学ぶか」「どのように学ぶか」という軸でも両者は明確に分かれます。リスキリングは企業の事業ニーズに直結するスキル習得を目的とし、就業しながら研修やオンライン学習で進めるのが一般的です。リカレント教育は個人のキャリア目標に基づいて学ぶ分野を選び、本来は就労と学習を交互に繰り返すスタイルが特徴です。

5項目の比較表で違いを一覧する

リスキリングとリカレント教育の違いを、主体・目的・学び方・学習内容・期間の5つの視点で整理すると次のようになります。

比較項目リスキリングリカレント教育
主体企業が主導個人が主導
目的DX推進・事業変革への対応キャリアアップ・自己実現
学び方就業しながら研修等で学ぶ就労と学習を循環させる
学習内容IT・デジタルなど事業直結の領域語学・資格・経営学など幅広い分野
期間比較的短期集中生涯にわたる長期的な営み
向いているケース現職で必要な新スキルを身につけたい中長期のキャリア形成や学び直しをしたい

次のセクションでは、この5項目それぞれについて具体的な違いを詳しく解説していきます。

リスキリングとリカレント教育の違いを5つの視点で徹底比較

前のセクションで示した5項目の比較について、ここではそれぞれの違いが生まれる背景や具体的な中身を掘り下げて解説します。

主導する主体は「企業」か「個人」か

リスキリングは企業が人材戦略の一環として主導する取り組みです。経済産業省は、リスキリングを「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。この定義にある「させること」という表現が示すとおり、企業が従業員に対してスキル習得の機会を提供し、育成を推進する構造になっています。

一方、リカレント教育は個人が自らの意思で学びを選択し、実行する営みです。厚生労働省も「それぞれのタイミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていくこと」としており、あくまで個人のキャリア設計に基づいた主体的な学びが前提となっています。企業は環境整備や費用補助などの側面から支援する立場にとどまる点が、リスキリングとの根本的な違いです。

学習の目的はDX対応か自己実現か

リスキリングの主な目的は、企業のDX推進や事業変革への対応です。デジタル技術の進展により、これまで存在しなかった業務や職種が生まれる中で、既存の従業員が新たなスキルを身につけて組織の競争力を維持・強化することが求められています。つまり、リスキリングは企業の経営課題と直結した実務的な目的を持っています。

リカレント教育の目的は、個人のキャリアアップや専門性の深化、そして自己実現です。語学力の向上や資格取得、経営学の学び直しなど、個人が描くキャリアビジョンに沿って学ぶ分野を選びます。企業の事業ニーズではなく、自分自身の市場価値を高めたり、新たなキャリアパスを切り拓いたりすることが動機となる点が大きな違いです。

学び方は就業中か離職・休職を伴うか

リスキリングは、就業しながら社内研修やオンライン学習プログラムなどを通じてスキルを習得するのが一般的です。業務時間内に学習機会が組み込まれることも多く、従業員が仕事を離れる必要がない点が特徴です。

リカレント教育は、本来「就労と学習を交互に繰り返す」という考え方に基づいています。海外では、離職・休職を挟みながら教育機関で学び直す形で語られることが多い概念です。ただし、日本では雇用慣行の違いから、在職したまま夜間・休日の講座やオンライン学習を活用して学ぶケースが多く、広義の意味で使われることが一般的になっています。文部科学省の生涯学習分科会でも、リカレント教育を「アップスキリングやリスキリングの双方を含む広義の意味で使用する」と整理しており、日本独自の文脈を理解しておくことが重要です。

学習内容はデジタル特化か幅広い分野か

リスキリングで扱われる学習内容は、IT・デジタルスキルなど事業に直結する領域が中心です。代表的なテーマとしては以下のようなものがあります。

  • データ分析
  • プログラミング
  • クラウド技術
  • AI活用

いずれもDX推進に必要な実務スキルであり、企業が定めた事業戦略に基づいて学ぶ分野が決まるため、個人が自由に選べるわけではありません。

リカレント教育の学習内容は、個人の目的に応じて幅広い分野にわたります。具体的には以下のような選択肢があります。

  • 語学(ビジネス英語など)
  • MBA・経営学
  • 簿記・会計
  • 社会保険労務士などの資格取得
  • 医療・介護分野の専門知識

仕事に直結するスキルだけでなく、長期的なキャリア形成を見据えた学びを自分で選べることがリカレント教育の大きな特徴です。

期間は短期集中か長期反復か

リスキリングは、企業の事業計画に合わせて比較的短期間で成果を出すことが求められます。特定のスキル習得を集中的に目指すケースが多く、すぐに業務へ活用できる即効性が重視されます。

リカレント教育は、生涯にわたって就労と学習を循環させるという長期的な営みです。一度の学びで終わるのではなく、キャリアの節目ごとに必要なスキルや知識を更新し続けるサイクルそのものがリカレント教育の本質です。人生100年時代と言われる今、働く期間が長くなるほど、この循環型の学びの重要性は高まっています。

リスキリングとリカレント教育のそれぞれの定義と注目される背景

リスキリングとリカレント教育のそれぞれの定義と注目される背景

前のセクションで解説した違いがなぜ生まれるのか、それぞれの成り立ちと注目される背景から補足します。

リスキリングとは企業主導で新しい職業スキルを習得する取り組み

リスキリングが世界的に注目されたのは、2020年の世界経済フォーラム(ダボス会議)がきっかけです。第4次産業革命による産業構造の変化を受け、企業が従業員のスキルを再開発する重要性が広く認識されました。日本でも2022年に政府がリスキリング支援に5年間で1兆円を投じる方針を表明し、企業のDX推進に向けた人材育成策として注目が高まっています。

参照:日本経済新聞「リスキリング支援「5年で1兆円」 岸田首相が所信表明」

リカレント教育とは就労と学習を生涯にわたり循環させる考え方

リカレント(recurrent)は「循環する」「繰り返す」を意味する英語で、1969年にスウェーデンのオロフ・パルメが提唱し、翌年OECDが正式に採用した教育概念です。人生100年時代の到来や雇用の流動化により、一度身につけたスキルだけでキャリアを全うすることが難しくなった今、節目ごとに学び直すリカレント教育の重要性が改めて高まっています。

生涯学習やアンラーニングとの違い

リスキリングやリカレント教育と混同されやすい概念に「生涯学習」と「アンラーニング」があります。それぞれの違いを整理しておきましょう。

生涯学習とは、趣味やスポーツ、ボランティア活動なども含め、人生を豊かにするために生涯にわたって行うあらゆる学びです。仕事やキャリアに活かすことを目的とするリカレント教育は、生涯学習の中の一領域と捉えるとわかりやすいでしょう。

アンラーニングとは、過去に習得した知識や固定化した価値観を意識的に見直し、時代に合わなくなったものを手放すプロセスです。リスキリングやリカレント教育が「新しい知識の獲得」に重点を置くのに対し、アンラーニングは「既存の知識の取捨選択」に主眼があります。実務上はアンラーニングがリスキリングの土台となることも多く、両者は補完関係にあります。

リスキリングとリカレント教育のメリット・デメリットの違い

リスキリングとリカレント教育にはそれぞれ異なるメリットとデメリットがあります。ここでは企業目線と個人目線に分けて整理します。

企業にとってのメリット・デメリット

企業がリスキリングやリカレント教育を導入する際には、それぞれの利点とリスクを把握した上で判断することが重要です。以下の表で両者を比較します。

リスキリングリカレント教育の支援
メリットDX人材を社内で育成できる外部採用コストを削減できる業務に直結するスキルが身につく従業員満足度・エンゲージメントが向上する人材流出の防止につながる組織全体の知識・スキルの底上げが期待できる
デメリット成果が出るまでに時間がかかる習得したスキルを活かして従業員が転職するリスクがある休職・離職中の人員補充が必要になる場合がある学習支援の制度設計や運用にコストがかかる

リスキリングは事業に直結する即戦力を育てられる反面、学んだスキルが市場価値の高いものであるほど人材流出のリスクが高まるというジレンマがあります。リカレント教育の支援は、直接的な業務貢献よりも従業員の成長意欲やキャリア自律を後押しする性格が強いため、成果が数字に表れるまでに時間がかかる点を理解しておく必要があります。

個人にとってのメリット・デメリット

個人が学び直しを検討する際にも、リスキリングとリカレント教育ではメリット・デメリットの性質が異なります。

リスキリングリカレント教育
メリット就業しながら学べる費用は企業負担が多い習得スキルをすぐ業務に活かせる自分の興味やキャリア目標に合わせて自由に学べるキャリアチェンジの選択肢が広がる
デメリット学習分野が企業のニーズに限定される自分が学びたい分野を選べない場合がある費用や時間を自己負担するケースが多い離職・休職する場合はキャリアの中断リスクがある

リスキリングは企業が費用や時間を提供してくれるため経済的負担が小さい一方で、学ぶ内容を自分で選べない制約があります。リカレント教育は学びの自由度が高く、長期的なキャリア形成に有利ですが、費用負担や学習時間の確保を自分でマネジメントする必要があります。自分の現在の状況と目指すキャリアに照らして、どちらの利点を優先するかを考えることが大切です。

リスキリングとリカレント教育の違いから考える自分に合った選び方

リスキリングとリカレント教育の違いから考える自分に合った選び方

両者の違いやメリット・デメリットを踏まえた上で、企業・個人それぞれの立場に合った選び方の判断基準を示します。

企業が導入する場合の使い分け方

企業がリスキリングとリカレント教育のどちらを優先すべきかは、自社が直面する課題の性質によって異なります。DXの推進や特定のデジタルスキルの早急な強化が求められている場合は、リスキリングを中心に据えるのが効果的です。企業が学ぶべきスキルを特定し、短期間で成果を出せるプログラムを設計することで、事業戦略に直結した人材育成が実現できます。

一方、従業員の自律的な成長やエンゲージメント向上を重視する企業には、リカレント教育の支援制度が有効です。学習費用の補助、勤務時間の柔軟化、休職制度の整備などを通じて、従業員が自ら学びたい分野に取り組める環境を整えることで、組織への帰属意識や長期的な定着率の向上が期待できます。

実際には、リスキリングとリカレント教育の支援を組み合わせて導入している企業もあります。たとえば、全社的なDX研修はリスキリングとして実施しつつ、個々の従業員の自発的な学び直しには費用補助制度で対応するといった、二層構造の設計が現実的な方法です。

個人が学び直す場合の選び方

個人が学び直しの方法を選ぶ際には、現在のキャリアの状況と目指す方向性を基準にするとよいでしょう。現職でのスキルアップやDX対応を目指す場合は、まず自社が提供するリスキリングの機会を活用するのが合理的です。費用は企業負担であることが多く、習得したスキルをすぐに業務で実践できるメリットがあります。

キャリアチェンジや新たな専門分野の開拓を志す場合は、リカレント教育が向いています。大学・大学院の社会人向け講座、オンライン学習プラットフォーム、資格取得講座など、自分のキャリアビジョンに合った学びを自由に選択できます。費用負担は大きくなりますが、後述する教育訓練給付金などの支援制度を活用すれば軽減も可能です。

なお、生成AIの普及によりスキル需要が変化する中では、「AIを使いこなすスキル」(プロンプト設計やデータ分析など)と「AIに代替されにくいスキル」(課題設定力や対人スキルなど)の両面を意識することも大切です。前者は企業のDX戦略に直結するためリスキリングで、後者は時間をかけて磨くリカレント教育で学ぶなど、使い分けを意識するとキャリアアップにつなげやすくなります。

どちらか一方に限定する必要はなく、リスキリングで社内のDXスキルを高めながら、リカレント教育で自分独自の専門性を並行して磨くという組み合わせも有効な選択肢です。

未経験の方におすすめの生成AIスクールは下記の記事で紹介しております。

未経験におすすめの生成AIスクール7選を比較!初心者向けの選び方・費用・転職支援まで解説

リスキリングとリカレント教育で活用できる助成金・支援制度

学び直しを始める際には、国の支援制度を活用することで費用負担を軽減できます。代表的な制度を企業向け・個人向けに簡潔に紹介します。

企業向け・個人向けの主な支援制度

企業向けの代表的な制度は「人材開発支援助成金」です。従業員に職務関連の訓練を実施した場合に、訓練経費や賃金の一部が助成されます。また、「生産性向上支援訓練」では、企業の課題に合わせた訓練を低コストで受けることが可能です。

個人向けでは「教育訓練給付金」が活用できます。厚生労働大臣が指定する講座を受講・修了すると、受講費用の20%から最大80%が支給される制度です。さらに、キャリア形成・リスキリング相談コーナーでは、キャリアコンサルタントへの無料相談も利用できます。いずれも詳細な要件は厚生労働省のWebサイトで最新情報を確認してください。

参考:キャリア形成・リスキリング推進事業【厚生労働省委託事業】

まとめ:リスキリングとリカレント教育の違いを理解して最適な学び直しを始めよう

リスキリングは企業主導でDX対応に必要なスキルを短期集中で習得する取り組み、リカレント教育は個人主導でキャリア形成のために就労と学習を循環させる学び直しです。「主体」「目的」「学び方」「学習内容」「期間」の5つの視点で違いを押さえておけば、自分の状況に合った選択がしやすくなります。助成金や支援制度も充実してきていますので、まずは自分に合った方法を見極め、具体的な一歩を踏み出しましょう。

リスキリングとリカレント教育の違いに関するよくある質問(FAQ)

リスキリングとリカレント教育の一番の違いは何ですか?

最大の違いは「誰が主導するか」です。リスキリングは企業が事業戦略に基づいて従業員のスキル習得を推進します。リカレント教育は個人が自分のキャリア目標に合わせて主体的に学ぶ取り組みです。

リスキリングは個人でもできますか?

リスキリングは本来企業主導の取り組みですが、個人が自主的に新しい職業スキルを習得することも広義のリスキリングと呼ばれることがあります。経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」のように、個人が活用できる支援制度もあります。

リカレント教育は離職しないとできませんか?

いいえ。本来の概念は就労と学習を交互に繰り返すものですが、日本では在職しながら夜間・休日の講座やオンライン学習で学ぶ形が一般的です。必ずしも離職・休職は必要ありません。

リスキリングと生涯学習の違いは何ですか?

リスキリングは仕事で必要な新しいスキルの習得に特化した取り組みです。生涯学習は趣味やスポーツ、ボランティアなども含む、人生を豊かにするためのあらゆる学びを指す広い概念です。

リカレント教育と「学び直し」は同じ意味ですか?

「学び直し」はリカレント教育の日本語訳として使われることが多いですが、厳密には同じではありません。リカレント教育は就労と学習を循環させるという仕組みの概念であり、単発の学習ではなく、キャリアを通じて繰り返し学び続ける点がポイントです。