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リスキルAIキャリア編集部
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Buffer of Thoughts(BoT)は、過去に成功した「考え方のテンプレート」を保存し、似た問題で再利用する推論手法です。毎回ゼロから考えさせるCoTや、複数経路を探索するToT/GoTと違い、BoTは既に効いた型を検索して当てはめます。
ただし単発タスクには向きません。週に何度も発生する資料作成、レビュー、分析、提案文作成のような反復業務で初めて元が取れます。BoTは型の保存コストを再利用で回収できる人だけが得をする手法です。
| 読者の状況 | BoTを使うか | 理由 |
|---|---|---|
| 同種の資料作成・分析・レビューを週3回以上する | 使う | 型の保存コストを回収しやすい |
| 毎回テーマが違う単発相談が多い | 使わない | テンプレ化しても再利用できない |
| 新規事業案・研究テーマなど探索が中心 | ToT/GoT優先 | 過去の型より分岐探索が向く |
| 提案書・議事録・求人分析・副業提案を繰り返す | 使う | 思考手順を資産化しやすい |
Buffer of Thoughts(BoT)とは?一次情報で定義する

BoTは、Ling Yangらによる論文『Buffer of Thoughts: Thought-Augmented Reasoning with Large Language Models』で提案されました。原文はarXiv:2406.04271で公開されています。公式実装はGitHubのYangLing0818/buffer-of-thought-llmにあります。
核となるのは「thought template(思考テンプレート)」の蓄積と再利用です。正解そのものではなく、正解にたどり着く思考の手順を保存します。BoTが再利用するのは答えではなく、答えへの道筋です。
論文は数学・図形・チェスなどのベンチマークで、従来の主要な推論手法より高い正答率を報告しています。次の表は論文が示す改善幅です。指標は正答率(accuracy)で、比較対象は従来の代表的な推論手法です。
| ベンチマーク | 指標 | 比較対象 | 改善幅(論文報告値) |
|---|---|---|---|
| Game of 24 | 正答率 | 従来の主要手法 | +約11ポイント |
| Geometric Shapes | 正答率 | 従来の主要手法 | +約20ポイント |
| Checkmate-in-One | 正答率 | 従来の主要手法 | +約51ポイント |
論文はLlama3-8B+BoTがLlama3-70Bの性能に迫る例も示しています。小さいモデルでも型で底上げできる可能性があります。正確な絶対値と比較条件は、論文の該当表を直接確認してください。
これらは数学・図形・チェスでの結果です。日本語の資料作成や副業提案文で同じ改善率が出るとは限りません。手動運用では条件が異なるため、数値はそのまま期待しないでください。
meta-buffer・problem-distiller・buffer-managerの役割
BoTは3つの部品で動きます。原文の定義に沿うと役割は次の通りです。処理の流れをテキスト図で示します。
入力問題 ↓ Problem Distiller - 問題の本質条件を抽出 - 既存テンプレで扱える形に変換 ↓ Meta-Buffer検索 - 似たthought templateを取得 - なければ新規推論 ↓ LLMがテンプレを使って推論 ↓ Buffer Manager - 成功した推論を抽象化 - 既存テンプレを更新または新規追加 ↓ Meta-Bufferに保存
この3部品は「蒸留→検索→適用→更新」のループを回します。論文実装そのものではなく、考え方を業務テンプレ管理へ転用する場合は、各部品を手作業に置き換えられます。
| 論文上の部品 | 役割 | 個人運用での置き換え |
|---|---|---|
| Problem Distiller | 入力問題を抽象化する | 依頼を「目的・制約・合格条件」に分解するチェックリスト |
| Meta-Buffer | 思考テンプレートを保存する | Notion DB / Googleスプレッドシート |
| Buffer Manager | テンプレを更新する | 成功・失敗ログを見てタグと手順を更新する運用 |
BoTとTree of Thoughts・Graph of Thoughtsの違い

BoTと多クエリ手法は考える方向が逆です。Tree of Thoughts(ToT)やGraph of Thoughts(GoT)は、その場で複数の思考経路を広げて探索します。BoTは過去の成功経路を再利用し、探索コストを抑えます。
論文では、BoTの推論コストは多クエリ手法の平均12%程度と報告されています。同種の問題を繰り返すほど、探索より型の再利用のほうが安く済む計算です。
| 手法 | 考え方 | コスト傾向 | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| Tree of Thoughts | 木構造で複数経路を探索 | 高い(多クエリ) | 新規・探索型の難問 |
| Graph of Thoughts | グラフで思考を統合・分岐 | 高い(多クエリ) | 要素の合成が必要な問題 |
| Buffer of Thoughts | 過去の型を検索・適用 | 低い(ToT/GoTの平均12%) | 類似問題の反復 |
同じ型の問題が繰り返し来るなら、探索をやめてテンプレ運用へ切り替える判断材料になります。新規の難問で複数ルートを試したい場合は、BoTよりTree of Thoughtsが向きます。使い分けは「Tree of Thoughtsとは?CoTとの違い・使い方・使わない基準を論文ベースで解説」で確認してください。安さ重視の探索手法を比べたい場合は「Algorithm of Thoughts(AoT)とは?ToTより安い理由と使わない基準」も参考になります。
個人が手動でBoTを再現する4つの手順

研究コードを動かさなくても、meta-buffer相当の資産は手作業で作れます。NotionやGoogleスプレッドシート1枚から始められます。論文の4工程を日常の作業フローに翻訳するのが最短です。
Notion/スプレッドシートで作るBoT管理表
最初に管理表の列を決めます。下の11列をそのまま作れば運用を始められます。1行が1つの思考テンプレートです。
| 列名 | 入力例 | 用途 |
|---|---|---|
| テンプレID | BOT-001 | 後から参照する |
| タスク種別 | 副業提案文 / 求人票分析 / 議事録要約 | 検索軸 |
| 問題タイプ | 比較判断 / 要約 / 改善提案 / リスク洗い出し | 思考型の分類 |
| 入力条件 | 案件URL、予算、納期、相手の課題 | プロンプトに差し込む材料 |
| 合格条件 | 500字以内、懸念3点、次アクション1つ | 出力評価 |
| 思考手順 | ①目的確認→②制約抽出→③論点分解→④出力 | BoTの中核 |
| 良い出力例 | 採用された提案文の本文 | 品質基準 |
| 失敗例 | 抽象的すぎて返信なし | 再発防止 |
| 最終更新日 | 2026-08-19 | 陳腐化チェック |
| 使用回数 | 7 | 残す/捨てる判断 |
| ステータス | 現役 / 要修正 / 非推奨 | 棚卸し |
最初に作るテンプレは3つに絞ります。増やしすぎると棚卸しが破綻します。
- 副業案件への提案文テンプレ
- 求人票から必要スキルを抽出するテンプレ
- 生成AI出力をレビューするテンプレ
工程1:問題蒸留(problem-distillerの手動版)
依頼を受けたら、まず条件と目的を1〜3行に絞ります。曖昧さを先に潰します。AIに「不足情報を選択肢付きで逆質問して」と指示すると欠落が見えます。
逆質問を挟むと、依頼者が未検討だった要素も埋まります。「この提案の目的は予算承認か、方向性合意か」を先に確定させると、後工程の作り直しを減らせます。コピペ用のプロンプトは次の通りです。
次の依頼内容を、BoTで再利用しやすい形に蒸留してください。
# 依頼内容
{依頼文}
# 出力形式
- 目的:
- 制約条件:
- 成果物:
- 判断が必要な論点:
- 不足情報:
- この問題タイプ:
- 似ている過去テンプレを探すための検索タグ:
工程2:テンプレ検索(meta-bufferの手動版)
蒸留した問題タイプで、既存テンプレを探します。Notionなら「タスク種別」「問題タイプ」「合格条件」で絞り込みます。該当があれば工程3へ、なければ新規作成に進みます。
テンプレには手順だけでなく「合格条件」を必ず添えます。過去の最良成果物を正解例として貼ると、AIが無難な平均点に逃げにくくなります。検索の判定は次のプロンプトに任せられます。
次の問題に使える過去テンプレを選んでください。
# 今回の問題
{蒸留済みの問題}
# 候補テンプレ
{テンプレ一覧}
# 判定基準
- 合格条件が近いか
- 入力条件が近いか
- 思考手順を流用できるか
- 流用すると危険な点はあるか
# 出力
- 推奨テンプレID:
- 流用できる理由:
- 修正すべき箇所:
- 使わない方がよいテンプレ:
工程3:当てはめ(テンプレ+今回条件の合成)
選んだテンプレに今回の条件を差し込み、AIに実行させます。数値条件は明示します。「原価率30%未満で合格」と書けば、AIが提出前に自己検証しやすくなります。
将来変わる値は「この閾値は今後変更の可能性あり」と明記します。Excel作業なら定数を数式に埋めず、参照セルへ誘導します。値の変更が入力の書き換えだけで済みます。
以下の思考テンプレを、今回の条件に合わせて適用してください。
# 思考テンプレ
{テンプレ本文}
# 今回の条件
{今回の条件}
# 合格条件
{合格条件}
# 出力前チェック
- 条件漏れがないか
- 数値条件を満たしているか
- 相手の意思決定に必要な情報があるか
- 不確かな点を断定していないか
工程4:更新(buffer-managerの手動版)
うまくいった型は必ずテンプレ倉庫へ書き戻します。ここを怠るとBoTは成立しません。差分だけメモし、失敗した型は「非推奨」タグで残します。
毎回言う定型指示は、テンプレ本文でなく常時読み込む設定側に書きます。「説明には図を使う」などは設定に固定すると指示が短くなります。更新は次のプロンプトで型に落とせます。
今回の実行結果をもとに、BoTテンプレを更新してください。
# 使用したテンプレ
{テンプレ}
# 今回の成果物
{成果物}
# 結果
{採用/不採用/修正指示/返信率など}
# 出力
- 残すべき手順:
- 削るべき手順:
- 新しく追加する条件:
- 失敗パターン:
- 次回の合格条件:
- テンプレのステータス:現役 / 要修正 / 非推奨
この更新運用はプロンプトのフレームワーク9選|暗記より使い分けで成果を出すの考え方とつながります。4工程のうち更新だけを続ければ、型は自然に精度が上がります。
テンプレ化すべきかを計算式で判断する

「3回以上ならテンプレ化」は目安であり、絶対基準ではありません。迷ったときの初期値として使います。実際は次の式で判定できます。
テンプレ化すべきか = テンプレ作成時間 ÷ 1回あたり短縮時間 ≦ 今後の使用回数
例を挙げます。副業提案文テンプレを作るのに30分かかるとします。1回の提案文作成が15分短縮できるなら、30分÷15分=2回で回収できます。今後2回以上使う見込みがあれば作る価値があります。
反対に、一度きりの社内イベント告知文に40分かけてテンプレを作っても、再利用の予定がなければ赤字です。溜めるかどうかは感覚でなく、作成時間・短縮時間・使用回数の3つで機械的に決めます。
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監修|北海道大学大学院 情報科学研究院 川村 秀憲 教授
人工知能・マルチエージェントシステム研究の第一人者。観光情報学会理事ほか。
プロンプト変数化とBoTの違いを整理する
両者は似て非なるものです。プロンプト変数化は完成した文面の穴埋めです。BoTは思考の型そのものを蓄積して当てはめます。変数化は文面の再利用、BoTは考え方の再利用という違いがあります。
| 観点 | プロンプト変数化 | Buffer of Thoughts |
|---|---|---|
| 再利用の対象 | 文面(穴埋め箇所) | 思考の手順・型 |
| 向く場面 | 定型文の量産 | 判断を伴う反復タスク |
| 更新の中身 | 変数の追加・修正 | 型の蒸留・入れ替え |
| 陳腐化リスク | 低〜中 | 中(型が古びる) |
実務では両方を併用します。型はBoTで管理し、型内の可変部分を変数化で穴埋めします。変数化の設計とやりすぎ基準はプロンプト変数化とは?使い回せるテンプレ設計とやりすぎ基準で解説しています。
思考テンプレを溜めても逆効果になる基準
BoTは万能ではありません。推論フレームワークとして強い反面、溜めること自体がコストです。割に合わない場面では作らないのが正解です。使わないケースを実務例で示します。
| 使わないケース | 理由 | 代替手段 |
|---|---|---|
| 初めて扱う業界の市場分析 | 過去テンプレに引っ張られ論点漏れが出る | ToT/GoTで論点を広げる |
| 法務・医療・税務の判断 | 古い型の再利用が危険 | 公式情報・専門家確認を優先 |
| 炎上対応文・謝罪文 | 文脈依存が強く流用が事故につながる | 個別に事実確認して作る |
| 最新AIツール比較 | 価格・機能が頻繁に変わる | 公式料金ページを都度確認 |
| 採用面接の回答丸暗記 | 型が強すぎると不自然になる | 論点整理だけに使う |
法務・医療・税務の最終判断は、テンプレでなく公式情報や専門家に確認してください。本記事は一般的な業務運用の話であり、専門助言ではありません。テンプレの陳腐化を防ぐには、四半期に1回の棚卸しを推奨します。
副業・転職でBoTのテンプレ資産を使う
溜めた思考テンプレは、案件ごとの立ち上がりを速くします。副業・転職・収入UPの3段階に分けて、具体的な作り方を示します。
副業で使うなら:提案文テンプレを1つ作る
クラウドソーシング案件で最初の提案文テンプレを作ります。次の順で組み立てます。
- 案件文を貼り、発注者の課題を3つ抽出する
- 自分が出せる成果物を1つに絞る
- 納期・修正回数・確認事項を書く
- 送信後の返信有無をテンプレに記録する
返信率をログに残すと、次回の合格条件を更新できます。過去案件の型を検索して当てはめれば、初回でも品質のブレを抑えられます。
転職で使うなら:求人票分析テンプレを作る
求人票から必要スキルを抽出するテンプレを作ります。生成AI関連の求人は要件が抽象的なため、型で分解すると比較しやすくなります。
- 求人票から必須スキルと歓迎スキルを分ける
- 生成AI関連スキルを抽出する
- 自分の経験と不足スキルを対応表にする
- 面接で話す「学習中の証拠」を用意する
作業ログではなく判断の枠組みを見せられると、面接で説明できる材料になります。テンプレ倉庫の画面1枚が、抽象的な自己PRを具体化します。
収入UPで使うなら:作業時間削減ログを残す
導入前後の時間を記録すると、見積もりブレを減らす材料になります。次は運用イメージの例です(数値は例示で、実際は自分の作業で計測してください)。
| 業務 | BoT導入前 | BoT導入後 | 短縮 |
|---|---|---|---|
| 提案文作成 | 40分 | 20分 | -20分 |
| 求人票分析 | 30分 | 12分 | -18分 |
| 議事録要約 | 25分 | 10分 | -15分 |
BoTは「プロンプトを覚える」話ではありません。目的設定、条件整理、出力評価、改善ログまで扱えないと実務では使い切れません。この記事の4工程「蒸留→検索→適用→更新」を、自分の業務テンプレで1つ作ってから学習を進めてください。
生成AIの活用度を客観的に確認する手段としてPEP検定があります。知識問題だけでなく、生成AIを仕事へ落とす力の確認に使えます。チームで型を共有したい場合は、法人研修で「蒸留→検索→適用→更新」の運用を組織へ展開する方法もあります。受検で合格や収入増を保証するものではなく、学習内容を実務に接続する準備として位置づけてください。
よくある質問
Q. Buffer of Thoughtsは非エンジニアでも使えますか?
使えます。論文の実装コードを動かす必要はありません。蒸留→検索→適用→更新の4工程を、Notionやスプレッドシートで手動運用できます。研究の目的は自動化ですが、型を貯める運用だけでも作業時間を短縮できる可能性があります。
Q. ToTやGoTと同時に使えますか?
使い分けが基本です。新規の難問はToT/GoTで探索し、うまくいった経路をBoTのテンプレとして保存します。論文ではBoTのコストは多クエリ手法の平均12%程度とされ、反復タスクではBoTに寄せるほうが安くなります。
Q. テンプレはどのくらいの頻度で更新すべきですか?
最低でも四半期に1回の棚卸しを推奨します。市場や社内ルールが変わると型は陳腐化し、正答率を下げるためです。使わなかった型は非推奨タグで残すと、次回の判断が速くなります。
Q. BoTを導入すると精度はどれくらい上がりますか?
タスクによります。論文はGame of 24で約11ポイント、Geometric Shapesで約20ポイント、Checkmate-in-Oneで約51ポイントの改善を報告しています。ただし数学・図形・チェスでの結果です。日本語の業務で同じ数値は期待できません。
Q. 変数化だけで十分では?
文面の量産なら変数化で足ります。ただし判断を伴う反復タスクは、思考の型を蓄積するBoTのほうが手戻りを減らせます。型はBoTで、可変部分は変数化で、と役割を分けると運用しやすくなります。
参考情報(一次情報)
- arXiv論文:Buffer of Thoughts: Thought-Augmented Reasoning with Large Language Models(https://arxiv.org/abs/2406.04271)
- 公式実装:YangLing0818/buffer-of-thought-llm(https://github.com/YangLing0818/buffer-of-thought-llm)
数値や比較条件を引用する際は、上記の論文本文と実装リポジトリで最新の記載を確認してください。本記事の改善幅は論文の報告値に基づく目安です。
「知っている」で止めない生成AIスキルの証明|PEP検定
PEP検定が問うのは基礎的な知識はもちろん、実務においてどのように生成AIを活用するか、プロンプトを設計するかなど“実際に使いこなす力”です。日本初の実務特化検定で、AIエージェントのように動きの速い領域もシラバスが追従。学び直しの成果を、転職・副業・社内評価で通用する客観的な根拠に変えられます。
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監修|北海道大学大学院 情報科学研究院 川村 秀憲 教授
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