人事の生成AI活用|使える業務一覧と任せていい業務・危険業務の判定表

人事の生成AI活用|使える業務一覧と任せていい業務・危険業務の判定表

この記事の監修者

リスキルAIキャリア編集部

リスキルAIキャリア編集部

リスキルAIキャリアは、AI時代の学び直し・キャリア形成・副業・転職に役立つ情報を発信するWebメディアです。編集部では、生成AIスキルの身につけ方、AI関連スクール・講座の選び方、キャリアアップにつながる学習方法などを、実務目線でわかりやすくお届けしています。

人事の生成AIは、求人票・面接質問・研修資料・社内FAQのように個人判断を含まない業務から使えます。同じ採用でも、求人票のたたき台作成は任せてよく、応募者の合否判定は任せてはいけません。判定は業務名ではなく、入力する情報で決まります。

この記事は、まず結論表で「任せていい業務」「条件付き業務」「任せない業務」を示します。そのうえで工程単位の判定表、ツール別の入力可否、匿名化のビフォーアフター、送信前チェックリストを解説します。根拠は個人情報保護委員会と厚生労働省の公表資料に置きます。

目次

この記事の結論|人事で生成AIに任せていい業務・危険な業務

この記事の結論|人事で生成AIに任せていい業務・危険な業務
人事業務の生成AI判定と入力情報の切り分け
判断 業務例 入力してよい情報 入力してはいけない情報 人間が確認する点
任せていい 求人票のたたき台、面接質問案、研修テスト 公開予定の職務内容、評価項目、一般知識 応募者名、社員名、評価スコア、健康情報 法定明示事項、差別表現、事実誤認
条件付き 応募書類要約、評価コメント改善、社内FAQ 匿名化済みの職務経歴、利用許可済み規程 氏名、連絡先、部署名、特定できる経歴 再識別リスク、社内規程との整合
任せない 合否判定、昇格判断、懲戒理由、健康相談分析 原則入力しない 要配慮個人情報、人事評価、給与、懲戒情報 判断は人間が行い、AI出力を根拠にしない

迷ったら「業務名」ではなく「入力する情報」で判定します。求人票作成は安全でも、候補者名や現職名を入れた瞬間にリスクが上がります。

人事の生成AI活用例一覧|まず何に使えるか

人事の生成AI活用例一覧|まず何に使えるか

人事の生成AI活用は「採用」「評価」「労務」「育成」で使いどころが違います。まず使いやすいのは、求人票、面接質問、研修資料、社内FAQのように個人判断を含まない業務です。

人事の領域別・生成AI活用例と入力データの扱い
領域 具体業務 任せる内容 入力データの扱い 判定
採用 求人票作成 職務内容のたたき台作成 公開予定情報のみ 任せていい
採用 スカウト文作成 属性別の文面案作成 個人名・現職名は入れない 条件付き
採用 面接質問作成 評価項目別の質問案作成 職務要件のみ 任せていい
採用 応募書類要約 経歴の構造化・要点整理 氏名・連絡先削除 条件付き
評価 評価コメント補助 曖昧な表現の修正・文体統一 氏名・部署を匿名化 条件付き
評価 評定・昇格判断 スコアリング・順位付け 個人評価情報を含む 危険
労務 社内規程FAQ 就業規則の要約・回答案 利用許可資料のみ 条件付き
労務 健康・休職相談 病歴・診断名の整理 要配慮個人情報 危険
育成 研修資料作成 スライド・理解度テスト作成 一般知識・公開情報 任せていい
育成 eラーニング教材 台本・演習問題作成 個人情報なし 任せていい

最初は、個人情報を含まない求人票・面接質問・研修資料から始めます。公開予定情報だけなら任せていい、応募者本人の情報が入ると条件付きか危険に変わります。

工数削減は「初稿作成時間」で測る

工数削減は「初稿作成時間」で測る

生成AIの効果は、感覚ではなく初稿作成時間で記録します。ゼロから書く作業を、修正作業に変えられるためです。削減率を断定せず、自社の業務条件で測ってください。

工数削減を記録するための記入例
業務 AI利用前の初稿作成時間 AI利用後の初稿作成時間 修正にかかった時間 再利用できるプロンプト名
求人票1本 例:60分 例:20分 例:15分 求人票_法人営業_v1
面接質問10問 例:30分 例:10分 例:10分 面接質問_人事企画_v1
研修テスト5問 例:40分 例:10分 例:15分 研修テスト_個人情報_v1

上記は効果を記録するための記入例です。削減率として断定せず、自社の業務条件で測定してください。使えたプロンプトを名前付きで保存すれば、翌月以降は再利用で作成時間を圧縮できます。

人事の生成AI活用は「工程単位」で任せる範囲を決める

人事の生成AI活用は「工程単位」で任せる範囲を決める

入力可否は業務名ではなく工程で分けます。採用業務でも、求人票作成と合否判定ではリスクが違います。業務まるごとを「使う/使わない」で決めると、安全な工程まで止めてしまいます。

入力可否は「そのまま可」「加工可」「原則NG」の3分類が実務的です。「個人情報はNG」の一行ルールでは、会社名や受領資料の扱いが感覚運用になります。具体例で線を引きます。

「そのまま可・加工可・原則NG」の3分類で線を引く

原則NGは、応募者や従業員が特定できる情報、人事評価、健康・病歴、NDA資料、ID・パスワードです。加工可は、固有名詞をA社・B氏に置換して構造だけ残すケースです。そのまま可は、公開情報や一般知識の要点整理です。

生成AIへの入力可否の3分類と判断ポイント
分類 入力してよい例 判断のポイント
そのまま可 公開求人票の要約、労働法の一般解説、社外公開済みの制度資料 公開情報・一般知識のみ
加工可 匿名化した職務経歴の構造整理、A社B氏化した相談事例 個人特定要素を除去し構造だけ残す
原則NG 応募者の氏名付き評価、健康診断結果、給与明細、NDA資料 特定個人・機微情報・機密

この3分類は生成AIに入力してはいけない情報|匿名化で使い続ける判定表と組み合わせて運用します。人事は機微情報の密度が高い部署です。線引きの解像度を上げておきます。

ChatGPT・Copilot・Geminiに人事情報を入れてよいか

ツール名だけで安全とは判断しません。判断軸は「入力内容」「契約条件」「学習利用」「アクセス権限」「ログ管理」です。無料版か法人版かでも扱いが変わります。

ツール・利用形態別の入力可否と確認事項
ツール・利用形態 判断 確認すること
個人アカウントの無料AI(ChatGPT無料版・Gemini無料版) 原則、人事情報は入れない 学習利用の設定、管理者制御、ログ管理、社内規程
法人契約の生成AI(ChatGPT Enterprise・Team) 条件付き 学習オフ、データ保持期間、管理者設定、DPA、アクセス権限
Microsoft Copilot 条件付き Microsoft 365の権限設計、人事フォルダの閲覧権限、秘密度ラベル
Gemini(Google Workspace版) 条件付き Workspace管理者設定、データ保護範囲、閲覧権限
社内閉域・専用環境AI 条件付き 委託契約、ログ、権限、個人情報の扱い

学習利用の有無や管理者設定は、各サービスの公式ヘルプと管理者向けドキュメントで確認します。特定ツールを「安全」と断定せず、契約条件と設定を確認してから使います。

採用・評価・労務・育成の生成AI判定表【工程単位】

4領域を工程で分けた判定表を示します。同じ領域でも工程で判定が変わります。各行に主な根拠を付けました。

採用領域:求人票は任せていい、応募者評価は危険

採用工程ごとの判定・条件・根拠
工程 判定 理由・条件 主な根拠
求人票・スカウト文のたたき台 任せていい 公開前提の文章生成 厚労省「労働者の募集を行う者等が遵守すべき事項」
職務要件の構造整理 条件付き 社名・製品名を匿名化 PPC「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」
応募書類の要約 条件付き 氏名・連絡先を除去して入力 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン
応募者の合否評価・スコアリング 危険 個人データを含み説明責任・公正採用のリスク 厚労省「公正な採用選考の基本」、PPC注意喚起資料

採用で最も危ないのは、応募者情報をそのまま貼ることです。氏名・生年月日・連絡先・現職名が揃うと個人が特定できます。要約させたい場合も、特定要素を消してから入力します。

生成AIで作った求人票の公開前チェック

生成AIの求人票案は、公開前に人が明示事項を確認します。厚生労働省の募集時明示事項に沿って、次の項目を点検します。

  • 業務内容が実態と一致しているか
  • 契約期間の有無が明記されているか
  • 試用期間の有無・条件が明記されているか
  • 就業場所・変更の範囲が書かれているか
  • 業務内容・変更の範囲が書かれているか
  • 始業・終業時刻、休憩、休日、時間外労働が書かれているか
  • 賃金、固定残業代、手当、支払日が書かれているか
  • 加入保険が書かれているか
  • 受動喫煙防止措置が書かれているか
  • 「若い人歓迎」「男性向け」など差別につながる表現がないか

根拠は厚生労働省「労働者の募集を行う者等が遵守すべき事項」です。生成AIの求人票案は下書きに限定し、公開前に必ず人が明示事項を確認します。

採用AIに入れない情報|公正採用上のNG例

厚生労働省「公正な採用選考の基本」は、本人に責任のない事項や本来自由であるべき事項を採用選考で把握しないよう示しています。生成AIにも以下を入力しない前提にします。AIが推測した出力に混ぜないため、入力時点で止めます。

公正採用で生成AIに入力してはいけない情報
区分 入力してはいけない例 AI出力で起きる問題
本人に責任のない事項 本籍、出生地、家族構成、家族の職業、住宅状況、生活環境 能力と関係ない推測が混ざる
本来自由であるべき事項 思想、信条、宗教、支持政党、労働組合、購読新聞、愛読書 不適切な適性判断につながる
属性情報 性別、年齢、国籍、障害、健康状態 バイアスを含む合否理由が出る

生成AIには、候補者本人の評価ではなく評価の枠組みだけを作らせます。職務要件から面接質問を作る、評価シートの項目を整理する、求人票の表現を分かりやすくする、この範囲が安全です。

評価領域:文章の言い換えは条件付き、評定確定は危険

人事評価工程ごとの判定・条件・根拠
工程 判定 理由・条件 主な根拠
評価コメントの表現改善 条件付き 氏名・部署を匿名化 PPC注意喚起資料、個情法ガイドライン
目標設定の文例づくり 任せていい 一般的な文例生成 公開・一般知識のみ
評価スコアの確定・順位付け 危険 説明責任・バイアス 厚労省「公正な採用選考の基本」
低評価・降格理由の生成 危険 不利益処分の根拠になる 個情法ガイドライン、社内規程

人事評価では、コメントの言い換えまでにとどめます。評定の確定や順位付けをAIに委ねると、根拠を説明できなくなります。不利益処分に直結する判断は人間が最終決定を持ちます。

労務・育成領域:制度解説は任せていい、健康情報は危険

労務・育成工程ごとの判定・条件・根拠
工程 判定 理由・条件 主な根拠
就業規則・制度の一般解説 任せていい 公開・一般知識 公開情報のみ
労務相談の下書き整理 条件付き 個人特定要素を除去 PPC注意喚起資料
健康診断結果・病歴の入力 危険 要配慮個人情報に該当し再識別リスクが高い 個情法ガイドライン、PPC注意喚起資料
研修構成・確認テストの作成 任せていい 架空ケース・公開情報で作る 公開情報のみ

育成領域では、研修設計に生成AIを使えます。ハラスメント研修、情報セキュリティ研修、生成AI利用ルール研修の構成や確認テストを作れます。実在社員の相談事例や懲戒事例は、部署名・役職・時期・本人属性を一般化した架空ケースに置き換えてから入力します。

人事部門で生成AIを導入する手順

導入は5手順に分けます。最初の対象は、求人票1本、面接質問10問、研修確認テスト5問のように成果物を限定します。小さく始めて記録を残します。

手順1. 対象業務を「文章作成」「要約」「判断」に分ける

文章作成は求人票や面接質問、要約は応募書類や規程、判断は合否や昇格です。文章作成と要約は生成AIに向き、判断は人が持ちます。まず文章作成から着手します。

手順2. 入力情報を4種類に分ける

入力情報を「公開情報」「社内情報」「個人情報」「要配慮個人情報」に分けます。公開情報はそのまま可、社内情報は許可と加工が前提、個人情報は削除と匿名化、要配慮個人情報は原則入力しません。健康診断結果や病歴は要配慮個人情報です。

手順3. 最初は低リスク業務から試す

低リスク業務は、求人票のたたき台、面接質問案、研修資料、社内FAQです。中リスクは応募書類要約、評価コメントの表現改善、労務相談の整理です。高リスクは合否判定、昇格・降格判断、懲戒理由の作成、健康情報の分析です。低リスクの成果が出てから中リスクへ広げます。

手順4. 効果を測り、プロンプトを名前付きで保存する

着手前と後で初稿作成の分数を記録し、工数削減表に残します。使えたプロンプトは求人票用・面接質問用・FAQ用と用途で分けて保存します。翌月以降は再利用で作成時間を短縮できます。

手順5. 最終判断者と承認フローを決める

求人票は公開前に人事責任者が確認、評価コメントは面接官と人事が確認します。合否や懲戒は生成AIの出力を根拠にしません。承認者と確認項目を先に決めると、現場が止まりません。

「知っている」で止めない生成AIスキルの証明|PEP検定

PEP検定が問うのは基礎的な知識はもちろん、実務においてどのように生成AIを活用するか、プロンプトを設計するかなど“実際に使いこなす力”です。日本初の実務特化検定で、AIエージェントのように動きの速い領域もシラバスが追従。学び直しの成果を、転職・副業・社内評価で通用する客観的な根拠に変えられます。

  • ✓知識で止めず、プロンプト設計など“手を動かして使う力”を測る
  • ✓CBTで全国いつでも受験可能
  • ✓個人の転職・副業から、社員のリスキリング成果の証明まで対応

監修|北海道大学大学院 情報科学研究院 川村 秀憲 教授
人工知能・マルチエージェントシステム研究の第一人者。観光情報学会理事ほか。

生成AIの実務に活きるPEP検定の詳細を見る →

人事で使える生成AIプロンプト例

そのまま使えるプロンプトを5本示します。各プロンプトに「入力してよい情報」と「入れてはいけない情報」を併記します。

求人票作成

あなたは採用広報担当です。以下の職務内容をもとに求人票のたたき台を作成してください。職種は法人営業。業務内容は既存顧客への提案、新規問い合わせ対応、見積書作成、社内調整。必須条件は法人営業経験3年以上、SaaS商材の提案経験。出力形式は「1.仕事内容 2.必須条件 3.歓迎条件 4.この仕事の魅力 5.注意して書くべき表現」。

  • 入力してよい情報:公開予定の職務内容、募集条件、制度情報
  • 入れてはいけない情報:非公開の給与レンジ、社内事情、退職者名、競合名を含む機密情報

面接質問作成

以下の職務要件に対して面接質問を10問作成してください。質問ごとに「確認したい能力」と「良い回答の観点」も付けてください。職種は人事企画。求める能力は制度設計、社内調整、データ分析、経営層への説明。

  • 入力してよい情報:職種、必要スキル、評価項目
  • 入れてはいけない情報:候補者の氏名、現職名、生年月日、連絡先

評価コメントの表現改善

以下の評価コメントを、事実ベースで簡潔な表現に直してください。人格評価ではなく、行動と成果に基づく表現にしてください。元のコメント「最近やる気がないように見える。資料提出も遅く、周囲への影響が悪い」。条件は、個人名は使わない、断定しすぎない、改善行動が分かる形にする。

  • 入力してよい情報:匿名化した行動事実、期間、成果物
  • 入れてはいけない情報:氏名、部署、病歴、家庭事情、メンタル不調の情報

社内FAQ作成

以下の就業規則の抜粋をもとに、従業員向けFAQを作成してください。専門用語を避け、1問1答形式にしてください。対象は有給休暇の取得ルール。出力は「質問」「回答」「人事に確認すべきケース」。

  • 入力してよい情報:社内で利用許可された規程文
  • 入れてはいけない情報:特定社員の勤怠履歴、休職理由、健康情報

研修テスト作成

以下の研修テーマについて、理解度確認テストを5問作成してください。各問に正解、解説、よくある誤答を付けてください。テーマは生成AI利用時の個人情報保護。対象者は人事部門の初任者。

  • 入力してよい情報:研修テーマ、対象者、公開情報
  • 入れてはいけない情報:実在社員の相談事例、事故の詳細、社外秘資料

入力してよい情報と入れてはいけない情報をセットで社内共有すると、担当者ごとの判断ぶれをなくせます。

生成AIに入力してはいけない情報|要配慮個人情報の切り分け

人事が扱う情報のうち、要配慮個人情報は最優先で除外します。個人情報保護法が定める要配慮個人情報には、病歴・健康診断結果・障害・犯罪歴などが含まれます。これらは取得や提供に本人同意が原則必要な機微情報です。

個人情報保護委員会は2023年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を公表しています(個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」)。確認した論点は、要配慮個人情報、利用目的の範囲、個人データの第三者提供です。応募者情報の入力可否は、この資料の第三者提供と利用目的の規律を根拠に判断します。

危険度が高い順に並べた人事のNG情報

  • 健康診断結果・ストレスチェック・病歴・服薬情報(要配慮個人情報)
  • 障害者手帳の有無、休職理由に関わる診断名
  • 氏名付きの人事評価・懲戒・降格の理由
  • 給与・賞与・査定スコアの個人明細
  • 応募者の氏名・連絡先・現職を含む書類原本
  • NDA対象の他社資料、ID・パスワード

要配慮個人情報は「匿名化すれば入れてよい」ではなく、原則入れない前提で運用します。健康情報は他の属性と結び付くと再識別されやすく、加工の判断が難しいためです。相談整理が必要なら、症状や属性を一般化した抽象表現に置き換えます。

ファイルを渡すときは最下層フォルダだけを指定する

AIにファイルを読ませる時は、上位フォルダごと渡さないでください。フォルダ指定は配下を全読みするため、並列に置いた人事・顧客の機密まで一緒に渡ります。デスクトップ全体や「仕事」フォルダの指定は禁止にします。

運用は、プロジェクト単位の最下層ディレクトリを都度指定する形に固定します。社内資料を渡す前提条件は「社内ルール順守・学習オフ設定・個人情報の匿名化」の3点です。

人事評価・採用データの匿名化手順と送信前チェックリスト

匿名化は「難しい」で止めず、段階手順に落とします。単純なマスキングだけでは、他情報との組み合わせで再識別される点に注意します。氏名を消しても、部署・年齢・入社年・役職が揃えば個人は特定できます。

今日からできる置換ルール(5段階)

  1. 氏名・連絡先を削除し、A氏・B氏に置換する
  2. 部署名・拠点名をX部・Y拠点に一般化する
  3. 評価スコアを1〜5などの粗い区分に丸める
  4. 特異値(唯一の役職・突出した年齢)を範囲表現に一般化する
  5. 日付を年月まで、または四半期単位に丸める

この手順は個人情報保護委員会の匿名加工情報制度が示す加工の考え方を実務化したものです(個人情報保護委員会「匿名加工情報制度について」)。特定の個人を識別できる記述の削除、特異な記述の削除、他情報との照合防止が基準です。単純置換だけでは正式な匿名加工情報の要件は満たしません。

匿名化の例|応募書類要約に使う場合

入力してはいけない原文と、生成AIに入れる形を比べます。何を削り、何を一般化したかを一緒に記録します。

入力してはいけない原文:山田太郎。1992年生まれ。東京都在住。株式会社ABCでSaaS営業を5年経験。現職では医療機関向けCRMを担当。2024年にうつ病で3か月休職。

生成AIに入れる形:A氏。30代。首都圏在住。SaaS営業を約5年経験。法人向けCRMの提案・既存顧客対応を担当。

削除・一般化した情報とその理由
削除・加工した情報 理由
氏名 個人特定につながる
生年 年齢特定を避けるため年代に丸める
会社名 現職特定を避ける
医療機関向け 業界が狭い場合は再識別リスクがある
休職・うつ病 要配慮個人情報に該当するため入力しない

匿名化の例|評価コメントに使う場合

入力してはいけない原文:営業2課の佐藤花子(35歳)。第2四半期の受注が目標未達で、上司との1on1でも改善が見られない。

生成AIに入れる形:営業部門の担当者B氏。直近四半期の受注が目標を下回り、面談後も改善行動が確認できていない。

氏名・課名・年齢を削り、行動事実だけを残します。文章の言い換えまでにとどめ、評定の確定はAIに委ねません。

送信前の再識別リスク自己チェック

  • 残った属性を組み合わせて個人を1人に絞れないか
  • 社内の誰かが読んで「あの人だ」と分かる特異値が残っていないか
  • 要配慮個人情報(健康・病歴)が紛れていないか
  • NDA資料・未公開業績・取引先が特定できる記述はないか
  • 学習オフ設定と社内ガイドラインの条件を満たしているか

5項目すべてに「問題なし」が付いてから送信します。1つでも引っかかれば、置換ルールに戻ってやり直します。チェック項目を毎回残せば、送信判断の根拠を後から確認できます。

仮名加工と匿名加工の違い|生成AI入力での判断

仮名加工と匿名加工は別物です。混同すると入力可否の判断を誤ります。仮名加工情報は他の情報と照合しなければ個人を識別できないよう加工したもので、原則社内利用に限られます。匿名加工情報は特定の個人を識別できず、復元もできないよう加工したものです。

仮名加工情報と匿名加工情報の違い
項目 仮名加工情報 匿名加工情報
復元 照合すれば可能 復元不可
第三者提供 原則不可(委託等は例外) 一定要件下で可能
主な用途 社内分析 外部提供・活用
人事での位置づけ 社内AI利用の下地 提供時の加工目標

仮名加工情報は、他の情報と照合すれば個人を識別できる可能性があります。外部の生成AIに入力する前提では「氏名をA氏にしたからOK」と判断しません。部署、役職、年齢、入社年、評価内容が残っていれば、社内では本人が分かる場合があります。

外部の生成AIに個人データを入力する行為は、第三者提供や委託に当たる場合があります。海外事業者のサービス利用は越境移転の論点も加わります。「社内で使うだけ」でも、外部AIへの送信は社外への提供になり得ます。契約や設定で学習に使われない状態にすることも判断材料です。

最終判断は人間が持つ|不採用・低評価の説明責任

不採用や低評価の判断は、AIに委ねません。理由はブラックボックス化とバイアスです。学習データの偏りが差別的な結果を生んでも、根拠を説明できなければ本人にも社内にも通りません。厚生労働省「公正な採用選考の基本」の趣旨とも矛盾します。

運用設計は、AIに比較案を出させ、決定は人が担う分業にします。判断材料は、単一予測ではなく楽観・中立・悲観の3シナリオ形式で出力させると使えます。各前提を並べると、見送りラインを人が自分で決められます。

「分からない」で止めない問い合わせ振り分け

回答不能時は、次のアクションまで提示させます。勤怠・労務は人事、経費は経理、PC・Teamsは情シスへ振り分ける指示を、あらかじめプロンプトに埋め込みます。回答不能メッセージだけでは、結局人に聞く元の運用に戻ります。

人事の生成AI活用を資格で説明できる形にする

人事で生成AIを使った実績は、「ChatGPTを使えます」では評価されません。説明すべきなのは、任せてよい業務の線引き、入力禁止情報の判断、出力の使い方の3点です。この記事のどこで身につくかを整理しました。

人事で説明すべき3点と本記事の対応箇所
説明すべきこと この記事での対応箇所 面接・副業提案での言い方
任せてよい業務の線引き 業務別判定表 求人票・研修資料はAIで初稿化し、合否や評価判断は人間が行う運用にしました
入力禁止情報の判断 NG情報・匿名化手順 応募者情報、評価情報、健康情報を分類し、入力前チェックを作りました
出力の使い方 導入手順・承認フロー AI出力は下書きに限定し、公開・評価・労務回答は人事が確認する設計にしました

評価されるのは、生成AIに詳しい人ではなく、入力可否を説明できる人です。判定表を社内標準にするなら、生成AI社内ガイドラインの作り方|形骸化を防ぐ手順で仕組み化できます。推進役として動く道は生成AI推進担当になるには|役回りを実績に変える手順で整理できます。

PEP検定では、生成AIのツール操作だけでなく、業務活用・リスク判断・情報管理の考え方を確認できます。人事で生成AI活用を職務経歴書や副業提案に書きたい人は、先に試験範囲を確認します。受検範囲はPEP検定の受験料・試験範囲・難易度を確認するで把握できます。

よくある質問

Q. 無料版ChatGPTに人事情報を入力してよいですか?

氏名、応募者情報、評価情報、健康情報、給与情報は入力しない前提にします。無料版か有料版かだけで安全性は判断できません。学習利用の設定、法人契約、社内規程、入力内容の4点を確認します。

Q. Microsoft Copilotなら人事データを入力してよいですか?

利用環境と契約条件によります。社内テナント内のデータ参照でも、閲覧権限の設定が甘いと、見せるべきでない人事情報を拾う可能性があります。人事フォルダ、評価資料、給与資料は権限範囲と秘密度ラベルを確認してから使います。

Q. 人事部門で生成AIルールを作るなら最低限何を決めるべきですか?

最低限、入力禁止情報、利用可能業務、承認が必要な業務、ログ保存、事故時の報告先を決めます。特に応募者情報、評価情報、健康情報、給与情報、懲戒情報は個別に扱いを決めます。

Q. 生成AIで作った求人票はそのまま公開してよいですか?

そのまま公開しません。厚生労働省の募集時明示事項に基づき、労働条件、賃金、勤務地、雇用形態、試用期間、固定残業代、受動喫煙対策などの表示を人が確認します。誇張表現や実態と違う表現も修正します。

Q. 応募者の履歴書を要約させたいのですが、そのまま入力してよいですか?

そのまま入力は避けます。氏名・連絡先・生年月日・現職名を除去し、職務内容の構造だけを残してから入力します。組み合わせで個人が特定される点が最大のリスクです。

Q. 健康診断結果を匿名化すればAIに入れてよいですか?

原則入れません。健康情報は要配慮個人情報で、他属性と結び付くと再識別されやすいためです。整理が必要なら症状や属性を抽象化した表現に置き換えます。

Q. 生成AIに評価スコアの最終決定を任せてよいですか?

任せません。ブラックボックス化とバイアスで説明責任を果たせなくなります。AIには3シナリオの比較案を出させ、確定は人が担う分業にします。

更新と最新動向の確認

本記事は公的機関の公表資料を根拠にしています。個人情報保護委員会は生成AI関連の注意喚起を随時更新するため、運用ルールは年1回見直します。最新の取り扱いは各機関の公式サイトで確認してから社内ルールを更新します。

参照する一次情報は次の通りです。個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日公表)、同「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」、同「匿名加工情報制度について」、厚生労働省「公正な採用選考の基本」「労働者の募集を行う者等が遵守すべき事項」、総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」です。各資料の最新版は公式サイトで確認してください。

「知っている」で止めない生成AIスキルの証明|PEP検定

PEP検定が問うのは基礎的な知識はもちろん、実務においてどのように生成AIを活用するか、プロンプトを設計するかなど“実際に使いこなす力”です。日本初の実務特化検定で、AIエージェントのように動きの速い領域もシラバスが追従。学び直しの成果を、転職・副業・社内評価で通用する客観的な根拠に変えられます。

  • ✓知識で止めず、プロンプト設計など“手を動かして使う力”を測る
  • ✓CBTで全国いつでも受験可能
  • ✓個人の転職・副業から、社員のリスキリング成果の証明まで対応

監修|北海道大学大学院 情報科学研究院 川村 秀憲 教授
人工知能・マルチエージェントシステム研究の第一人者。観光情報学会理事ほか。

生成AIの実務に活きるPEP検定の詳細を見る →